ILoveGeorgeAsakura anew

科学忍者隊G-2号ことコンドルのジョー(本名=ジョージ浅倉)をこよなく愛するキョーコ南部のブログです。 科学忍者隊ガッチャマン、見ようね♪

_・S・ストーリー

庭の草叢(くさむら)

庭の草叢くさむら
                                                                  by があわいこ


 長い階段を這い上ると石像に偽装してある鋼鉄の扉が開いて冷たいが新鮮な空気が血に染まったジョーの身体を包んだ。
ここがギャラクター本部の入り口だ。
反射的に左手首に手をやってジョーは皮肉な笑みを浮かべた。そしてそこからのそりと這い出ると仰向けになって霧の向こうにかすかに見える懐かしい青空を見つめた。
(あいつらと大空を旋回しながら飛んだのはいつのことだったかな)

と・・その時、頭の上の方で何人かが走っていく足音がして声も聞こえた。
「ガッチャマンだ!」

ジョーは半身を起こした。
(ガッチャマン?健。どこにいるんだ、健。お前に本部を知らせなきゃ、俺は・・俺は・・)

まだ大きな声は出るだろうか?出せるだろうか?
受けた銃弾がいくつか埋まったままになっている腹に力を込めた。
「ケーン!ケーン!」
何とか声は出たが全身に言いようのない痛みが走ってジョーはその場に倒れた。


遠のく意識の中、草の匂いがジョーにBC島にいた幼いころを思い出させていた。


 庭の草むらからピヨピヨと鳴き声がするのでそっと近づいてみると小さなスズメの雛が羽を震わせている。
そのいたいけな姿がかわいらしくてジョージは草の匂いを嗅ぎながら身を伏せたままじっとその様子を見つめていた。

「巣から落ちたのだろう。いまに親がやって来てエサをやるから大丈夫だよ」
いつの間にかそばにパパも来ていてそう教えてくれた。
ところがしばらく待っていても親スズメは現れなかった。


あの子スズメは・・


銃声が聞こえてジョーは我に返った。

その音がした方に目をやると雑魚ギャラの後ろ姿が見えた。
誰かが追い詰められたんだろうか?そう思ったのと同時にズボンの隠しポケットに手をやると一本だけ羽根手裏剣が残っている。
 カッツェじゃないのが残念だったが、雑魚野郎の頸椎をめがけて最後の一本を撃ちこんでやった・・
つもりだったが当たったのか外れたのか?確認する前にジョーの全身に再び激しい痛みが走りその場に力なく倒れこんでしまった。

「ジョー!」
ジュンだとすぐにわかる声がして足音が近づいてきた。
狙われていたのはジュンだったのか?じゃぁあの羽根手裏剣は命中したんだな。よかった。
カッツェに投げた一本は外しちまったからなぁ。あれはとんだ無駄遣いだったぜ。

「ジョー、しっかりして」
目の前に心配そうなジュンの大きな瞳があった。
「ジュン、健を呼べ。本部の入り口はここだ」

「こちらG‐3号・・」
ブレスレットで健を呼ぶジュンの声を聞きながらジョーはまたあの日のジョージに戻っていた


 「親スズメは蛇かカラスにでもやられたんだろう。もしかしたらこの子スズメを守ろうとしたのかも知れないな」
ジュゼッペはそう言いながらペットショップから調達してきたミルワームをピンセットでつまみあげて羽を震わせ大きな口を開ける子スズメに与えていた。
いつまで待っても親スズメが来ないのでとうとうジョージは子スズメを拾いあげて家で飼うことにしたのだ。
「この子、いつか親の仇をとれるかな」
そう言うジョージにピンセットを渡したジュゼッペは少しあいまいな答えを返した。
「そうだな・・。もう少し大きくなって立派な翼が生え揃えばもっと高くもっと速く飛ぶことができるようになる。そうすれば好きなところへ自由に行けるようになるさ」

 その後しばらくするとその子スズメは本当にどこかへ飛んで行ってしまった。
ジョージは寂しかったがきっと親の仇を討ちに行ったんだと自分で自分を納得させた。

そして自分の両親が殺された後、ジョーも翼を与えられた。
あの時、ジョーはこれで親の仇が取れるとうれしかったものだ。

だが今は翼をもがれこうしてあの日の小さな子スズメのようにジョーは冷たい草むらの上に横たわっていた。


「ジョー、お前ってやつは」
聞き慣れた声に名前を呼ばれてうすら目を開けると見飽きてはいるが懐かしい青い瞳がそこにあった。
「わかってるよ。それ以上言うなって。これが俺の生き方だったのさ」

 生死を共にしてきた四人の仲間がジョーの顔を覗き込んでいた。
ジョーにはその向こうにジュゼッペとカテリーナが立っているのも見えた。

ギャラクターだった二人が迎えに来たってことは俺が行くのは地獄だろうか?

まぁいいか。地獄へ行けば健のやつにはもう会わなくて済むからな。
これから健は俺の屍を踏み越えてあの階段をあっという間に駆け下りていくんだ。
そしてカッツェの野郎を地の底へ叩き落として地獄へ送り、父親の仇をとるのさ。

そんなことを考えていたらまた健に皮肉を言っていた。
ここに俺を置き去りにして行くことを悔やむんじゃねぇよ・・と言ってやりたかったのによ。

パパ、ママ。
みんなにお別れを言いたいんだ。
もう少し待っててくれ。


(おわり)


切手とコイン

切手とコイン

                   byがあわいこ


 クリスマスツリーの飾りつけも終わり、スナックジュンの店内はパーティーの準備が万端整っていた。
あとはスタンド看板の電気をつけてお客さんが入ってくるのを待つだけとなっている。
ところがカウンターで調理をしているはずの甚平の姿がなかった。
「ジンペイ!あら・・どこ行っちゃったのかしら」
カウンターの中を覗き込んだ後、ジュンは2階に上がっていった。すると自室のベッドの上にしょんぼりと腰掛けている甚平をみつけた。
テーブルの上には何かのノートのようなものが2冊並べてある。
「どうしたの」
「ジョーの兄貴からクリスマスプレゼントが届いた」
肩を落としたままの格好で甚平はため息まじりにそうつぶやいた。
「えぇ?!」
ジュンは耳を疑った。
というのもクロスカラコルムから戻ってずいぶん経っていたからだ。
「まさか、ジョーは生きていたの!?」
ジュンの声がうわずっている

「うぅん、おねぇちゃん。これクリスマスに届くようにしばらく局留めになっていたらしいんだ」
「まぁ」
ジュンは机に近づくとかなりしっかりとした作りの”ノート”の表紙に触れた。
「それにしても同じようなノートが2冊とはねー」
すると甚平は片方の”ノート”に手を置いた。
「違うよ。こっちはオイラがジョーにあげようと思って買ったコインアルバムだよ。集めていた切手を売ってさ。そしたらこのジョーの手紙にはもうコイン集めはやめたからそれを全部売り払って切手帳を買ったから使えって書いてあるんだ。オイラもう切手は一枚だって持っていないって言うのにさ」

「ジョーがコインの収集をしていたなんてちっとも知らなかったわ」
二人がお互いを思いやる気持ちがとんだ行き違いになってしまったことをジュンは理解した。

甚平は右手の中指で鼻先を軽くたたきながら答えた。
「おいらが一度トレーラーに遊びに行った時さ。瓶の中にコインが沢山入っていたんだ。で、そのうち『甚平の切手みてぇにきちんと整理する』って言ったんだ。その時、『オイラの切手帳はボロっちくてとても他人ひとに見せられるものじゃないよ』といったのをジョーの兄貴は覚えていてくれたんだと思うよ」
甚平は涙声になっていた。

「あのころ、竜巻ファイターを2度も失敗したりして元気がなかったろ?だからクリスマスに内緒でプレゼントしようと思っていたんだ」

ジュンもアルバムの表紙を優しく撫でていた。
「これ、どうするの?」
「もちろん大切に取っておくさ。大人になってう~~んと稼いだらこの二冊とも切手とコインで満タンにするんだ」
鼻をすすったものの元気な声でそう言った甚平は2冊のアルバムを大切そうに机の引き出しに入れた。
そこにはあの日健が受け取らなかったブーメランも仕舞ってある。

「そうね、ジョーの分も頑張って集めなくちゃね」

その時だった。
「ジューーン、甚平お坊ちゃまーーー!腹が減ったぞい。早く店を開けてくれんかいのー。他のお客さんも店の外で待ちくたびれているぞい。クリスマスの掻き入れ時だというのにまったく姉弟きょうだい揃ってのんびりしちょるのー」
階下から竜の呑気な声が聞こえた。

ジュンと甚平は顔を見合わせるとクスッと笑い階段を下りていった。

(終わり)

ハロウィンのお菓子

「トリック、オア、トリート!!」

背丈は低いがジョーより怖い顔をした三人組がそう口々に叫びながらスナックジュンの扉を開けて入ってきた。
カウンターで水を飲んでいた健は目にもとまらぬ早業でジャンプ!天井に貼り付くと様子をうかがった。
(まさか、ギャラクターじゃないだろうな)

「あれ?誰もいないな」
フランケンシュタインが顔に似合わないかわいい声でそう言った。
「いつもきれいなお姉さんがいるんだけどな」
ドラキュラがそう答えた。

(きれいなお姉さん?誰のことだ?)
ますますわけがわからない健はズボンの隠しポケットに手をやった。いつでもブーメランを飛ばすことができる態勢だ。

「仕方ないな。もう一回りしてから来よう」
狼男がそう言うと三人組はおとなしく出ていった。

その時、キッチンの奥からジュンの声がした。
「ケーン!ハロウィンのクッキーが焼きあがるから子供たちが来たらあげてね♪」
(クッキーだって?ジュンが作ったのか。肝試しに使うのかな。まぁ、残しておいても竜が来ればあっという間に片付くだろう)

健は何事もなかったかのようにカウンターの席に戻ると水を一口飲んだ。

「ところでジュン。そのハロウィンとか言うのは何だ」
「やーねー、健ったら。去年もやったじゃない。子供がお菓子をねだりに家々を回ってくるのよ」
健の目が光った。
「そいつはいいことをきいたぞ。おい、ジュン。18歳はまだ子供だよな」
「まぁ!意地汚い」
ジュンの眉間に皺が寄った時だ。

「トリック、オア、トリート!!」
さっきとは違う三人組が入ってきた。

「なんだ。甚平はいいとして竜とジョーはどう見ても子供には見えないぞ」
ニヤリとした健はそういって甚平にジュンのクッキーを渡した。
「あー、兄貴、俺はいいからさ。」
「あら~、甚平お坊ちゃまが珍しい。オラがいただくぞい」
あっという間にクッキーは竜の口の中に消えた。
「おい、リュウ。大丈夫か?それ、ジュンの手作りだろう?」
ジョーが鋭いまなざしを残りのクッキーに向けた。
その時!
「ブッハ~~!み、水、水!」
竜は健が飲み残したコップに突進した。
「そらみろ、いわねぇこっちゃない」
ジョーがそう言って高笑いした。
「いくらハロウィンでもこれはないわー」
竜がため息をついたとき、5人のブレスレットが一斉にスクランブルをキャッチした。

「ちぇ、ハロウィンの夜に本物の悪魔がお出ましだぜ」

健を先頭に5人の若者は風のようにスナックジュンを後にした。

(おわり)

天国への階段(きざはし)

昇れるか?

耳元で誰かの声がした
うっすら目を開けてみると倒れている俺のすぐそばに俺が立っていた
自分の声だったのか
おい、そこにいるジョー。まだ俺から離れるんじゃねぇよ
俺にはまだやることがあるんだ

カッツェの野郎はもう俺が死んだと思っているだろう
いや、生きていたとしてももう身体を動かすことができないと思っているはずだ
だからこんなところに置きっ放しにしてどっかへ行ってしまったんだ

あそこにさっきゴッドフェニックスが映っていたモニターがあるが今は何も映っていない
いわゆる砂嵐ってやつだ
あれは幻だったのだろうか?
いや違う

ふっ、残念だったな。カッツェ
俺はこれから這いつくばってでもこの本部の入り口を健に・・いや、ガッチャマンに教えに行くぜ

どうしてここがわかったか知らねぇが流石だぜ、健
外ではここの入り口を探して暴れ回っているんだろうなぁ。今すぐ行くからな、待ってろよ

俺もこの前、暴れてやったんだぜ
もうちょっとのところでめまいに邪魔されたがな
だが、あの時分かったんだ
とことん身体を痛めつけられたときにアドレナリンがいつも以上に俺の身体を充たすってことがな

なんていったって俺はあのギャラクターの子だからな
小さいころにそういう風に育てられたのかも知れねぇ

あぁ、わかるぜ。アドレナリン・・この感じだ
手も足も動きやがる。目も見える
ざまぁみろってんだ
さっきは外したが今度は必ずカッツェの眉間に残しておいた最後の羽根手裏剣を一本ぶちこんでやる

ここだ
この階段を昇りきったところが入り口だ


昇れるか?


思いっきり手を伸ばしたつもりがぬるりと生暖かいものが手指に絡んでいて上手く階段のへりに手がかからねぇ
くそう
目が霞んできちっまってよく見えねぇが手が真っ赤に染まっている
ちぇ、もう俺の中の血は全て出つくしたと思っていたのに、まだ残っていたらしい

あっ、しまった
雑魚どもをなんとかかわせたのはよかったが、これじゃぁ振り出しに戻っちまうじゃねぇか
いつの間にか身体がずいぶんと重たくなっちまった
軽い身のこなしが信条だったコンドルのジョーさまが泣くってもんだ


あの夕日が当たるアパートの階段
覚えているぜ
あの時のめまいは普通じゃなかったからな
だがまだあの時は身体が動いたぜ
だからまだまだ大丈夫だって思えたんだ

あのおばさん、どうしているかなぁ
息子が帰って来るって言っていたっけ
どんなやつか知らねぇが、母親に心配かけるなんてとんでもねぇやつだ
一度会ってブッ飛ばしてやりたかったぜ


ん?頬に冷たい空気が当たる
外へ出られるぞ


もう少しだ



ジュゼッペ浅倉物語 10

故郷未だ忘れがたく~ジュゼッペ浅倉物語 10(最終章)

                   byがあわいこ



 ファツイオは手紙を読んだその足で市庁舎へと向かった。だがカッツェは市庁舎にはいなかった。
カッツェは最近BC島を留守にすることが多くなっていた。
市長室ではカッツェから新しく市長に任命された705号がビデオフォンでどこか遠くにいるカッツェと話し中だった。
電波の状態がいまひとつ良くないのでそう思ったファツイオだったがそんなことはお構いなしにさっそくジュゼッペの件を報告した。
するとカッツェはあっさりと「もうジュゼッペには用はないのでジュゼッペ浅倉とその家族を一人残らず抹殺せよ」と市長に命令したのだった。
市長はビデオフォンを切ると口ひげに手をやりちょっと考えてからファツイオにレベッカと一緒にまた市庁舎へ来るように命令した。

 次の日、レベッカはファツイオとともに市長の大きすぎるデスクの前に直立不動の姿勢で立っていた。
そしてそこでレベッカにジュゼッペ一家の暗殺命令が下ったのだ。
自動小銃で狙い、失敗した時は薔薇爆弾でとどめをさせということだった。
動揺するレベッカに市長は冷たく言い放った。
「ギャラクターの隊員となるために育てねばならないお前の娘はこの島のちっぽけな教会へよく遊びに行ってはそこに集まる子供たちと仲良くしているそうだな。知らないとは言わせないぞ。何が好きであんなところへ行っているのか?親の監督不行き届きこの上ない。このまま成長したらギャラクターを抜けたいなどと言い出しかねないぞ。そうしたらどう落とし前をつけるつもりかね?このことがカッツェさまのお耳に入ったらどんなことになるかわかったものではない。お前が丹精込めて育てていた薔薇の花に爆弾を装着して手りゅう弾代わりに敵にお見舞いするというアイデアをカッツェさまが高く評価されてデブルスターの名誉ある隊長に任命された恩を忘れたわけではあるまい。カッツェさまがお留守のうちにこの裏切り者たちを処刑してしまうのだ!」


 「私にはできない。一度に三人もるなんて・・」
自宅に戻ってきたレベッカはベッドに突っ伏した。
「大丈夫だよ。俺がこっそりと援護してやる。お前は市長に与えられたこの銃のトリガーをとりあえず引けばいい」
そう言うとファツイオはクロゼットの奥から今度は自分のワルサーを取り出し、慣れた手つきでそれに減音器サプレッサを装着した。
「お前が失敗すると俺の身も危ないからな。まぁ、お得意の薔薇爆弾もあることだしきっとうまくやれるさ」
ファツイオはクロゼットの扉をちょっと乱暴に閉めると今度は電話の横に置いてあった盗聴器の受信機からテープを取り出して手のひらの上で握り直した。
「ジュゼッペ一家はジョージの夏休みが終わるころに避暑地の海岸からクルージングに出るということだ。たぶんそのまま本土へ渡るという計画だろう。レンタルヨット屋の親父さんには気の毒だったが天国へ行ってもらった。その代わりにジュゼッペとは面識のない508号が店主になっている。船が用意できるまでビーチパラソルが並んでいる浜辺で待っていてもらうという段取りだ。そこで裏切り者の処刑というわけだ。見事に額の真ん中を撃ちぬいてやろうかな?マフィアの子の最期にふさわしいだろう?」
ファツイオは独り言のように話しながら浴室へ消えていった。

「いつの間にジュゼッペの寝室に盗聴器を仕掛けたのよ?」
レベッカが涙に濡れた顔を上げた時には答えはなく、シャワーの音に混じってファツイオの鼻歌が聞こえるだけだった。


 夏も終わりの避暑地は人影も少なく静かだった。
BC島は小さな島だが、この海岸の近くにだけなぜか冷たい海流が渦巻いているおかげで夏の間も涼しく過ごせるのだ。BC島民は古くからここを「小さな避暑地」と呼んで利用してきた。
 レンタルヨット屋の店主から船の用意ができるまで待っているように指定された浜辺のテーブルはすぐにわかった。
しかし椅子がなかったのでそれが用意されるのを待っていたが、ジョージは待ちきれずに波打ち際へと走って行ってしまった。
「ジョージ!」
追いかけようとしたカテリーナの腕をジュゼッペがつかんだ。
「これからしばらく船の中で窮屈な思いをすることになる。遊ばせてやろう」
カテリーナはジュゼッペを見上げた。
「上手く行くかしら?」
「大丈夫。心配ないよ、カテリーナ。私はこれでもギャラクターの大ボスだ。そしてマフィアの子でもある」
ジュゼッペは不敵な笑みを浮かべると、灰青色の瞳でカテリーナを見つめ、その唇を強く吸った。

 ビーチ・バーのボーイがやっと椅子を運んできたが、向かい合わせに2脚をセットしただけだった。ジュゼッペがもう一脚持って来るように頼んだが変な外国語をしゃべりながらどこかへ行ってしまった。
「ちぇ、あの様子だとアフリカのほうから移民して来たばかりのやつらしいな」
ジュゼッペは肩をすくめた。
 二人はそのままテーブルを挟んで座ると浜辺で砂遊びをするジョージをぼんやり見つめながらたわいもない話をした。

 この夏休みは親子三人水入らずで過ごすことができて本当によかった。
ギャラクターの寄宿舎で非人間的な暮らしをしてきたジョージも忘れかけていた家庭の暖かさを思い出したようだ。
目を覆いたくなるようなジョージのいたずらも日に日に影を潜め、カテリーナが島の名物料理を作る傍らでその手伝いをしたり、ジュゼッペと共に釣りや海水浴に出掛けては少しだけ日本語を教わったりもした。
この島を抜け出すことができればそんな「普通の」生活を送ることができるだろう。
 思えばジュゼッペも8歳の時に新しい家族とともに島を出て日本へ渡った。
日本に着いたらまず外国人墓地に眠っているはずの「両親」を訪ねてみよう。そしてジョージに祖父である浅倉譲二の話をもっとしてやろう。

「ペッピーノ、ジョージはギャラクターにならずに済むわね」
にっこりとほほ笑んだカテリーナがそう小さくつぶやいた。
が、彼女の向こうに見える閉じられたビーチパラソルの後ろで何かが光り鈍い音が聞こえたような気がしたその瞬間、カテリーナが血を吐いた。

バキューン!

ジュゼッペは迷うことなくリボルバーの引き金を引いた。ファツイオが倒れるのを見たか見ないかのうちにジュゼッペは背中に衝撃を受けた。

バキューン!

身体中がカッと熱くなった。レベッカに撃たれたのだ。
「ジョージも殺られる!」

二人は最後の力を振り絞って愛息の名を呼んだがもう息が続かなかった。図らずも二人の断末魔の叫びはジョージのコードネームだった。
「ジョー!」
「ジョー!」


 サクサクと砂の上を走ってくる足音がする。が、そこに立っているのはロザンナだった。
「ママ?」
ジュゼッペにはわかった。母親が自分を迎えに来たのだ。
「ママ、ジョージは?」
そう言おうとした時、ジョージの息づかいが耳元で聞こえた。
「ジョージ・・いや、ファルコのジョー。私の銃を取れ。使い方はわかっているな」
ジョージにはもうジュゼッペの声は聞こえていないはずだったが、それが聞こえたかのようにジョージは父親の手から撃ったばかりの暖かいリボルバーを奪い取ると仮面の女にその銃口を向けた。

 レベッカは幼いジョージに銃口を向けられて焦った。ジュゼッペそっくりの鋭い灰青色の瞳がまっすぐに自分を狙っている。
考えてみると初めて薔薇の話をした相手はジュゼッペだった。皮肉なものだ。
レベッカが銃を持ち直した瞬間にファルコのジョーは躊躇うことなくその小さな手でリボルバーのトリガーを引くだろう。銃は使えない。
レベッカは胸に隠し持っていた薔薇爆弾を取りだすと昔のように右手指で弄びながらジョージの前に放ってみせた。
ピンク色だったその薔薇はジョージの目の前では真っ赤に色を変えた。
色が変わる薔薇を作りたいというレベッカの夢は叶っていたのだ。
そしてそれは大爆発して小さなジョージは吹き飛んだ。
「フフフ・・ギャラクターの裏切者はこうなるのだ。親の罪は子の罪。恨みたければ地獄へ行ってギャラクターを裏切ったお前の親を恨むがよい」


 どれくらい時間がたっただろうか?ジョージは遠のく意識の中で自分を抱きしめている男のYシャツから父親と同じ香りがするのを感じていた。
「パパ・・」

 ジュゼッペは虫の息だったがジョージに呼ばれたような気がして最後の力を振り絞って目を開いた。すると見覚えのある小さな脚が揺れているのが見えた。
そしてそのジョージを抱いて去っていく男の後ろ姿も見えた。小さくなっていくその男の背中をじっと見つめながらジュゼッペは静かに灰青色の瞳を閉じたのだった。


(おわり)


 参考文献
SFロマン「科学忍者隊ガッチャマン」
朝日ソノラマ 鳥海永行 著


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Author

キョーコ南部

200
アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」の科学忍者隊G-2号ことコンドルのジョーが大好きです
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以下 個別記事へ

第1話 ガッチャマン対タートル・キング
第2話 魔のお化け空母現わる
第3話 嵐を呼ぶミイラ巨人
第4話 鉄獣メカデゴンに復しゅうだ
第5話 地獄の幽霊艦隊
第6話 ミニ・ロボット大作戦
第7話 ギャラクターの大航空ショー
第8話 三日月サンゴ礁の秘密
第9話 月よりの悪魔
第10話 地底怪獣大戦争
第11話 謎のレッド・インパルス
第12話 大喰い怪獣イブクロン
第13話 謎の赤い砂

第14話 恐怖のアイス・キャンダー
第15話 恐怖のクラゲ レンズ
第16話 無敵マシンメカニカ
第17話 昆虫大作戦
第18話 復讐!くじら作戦
第19話 地獄のスピード・レース
第20話 科学忍者隊危機一発
第21話 総裁Xは誰れだ
第22話 火の鳥対火喰い竜
第23話 大暴れメカ・ボール
第24話 闇に笑うネオン巨人
第25話 地獄の帝王マグマ巨人
第26話 よみがえれゴッドフェニックス

第27話 ギャラクターの魔女レーサー
第28話 見えない悪魔
第29話 魔人ギャラックX
第30話 ギロチン鉄獣カミソラール
第31話 南部博士暗殺計画
第32話 ゲゾラ大作戦(前編)
第33話 ゲゾラ大作戦(後編)
第34話 魔のオーロラ作戦
第35話 燃えろ砂漠の炎
第36話 ちびっ子ガッチャマン
第37話 電子怪獣レンジラー
第38話 謎のメカニックジャングル
第39話 人喰い花ジゴキラー(前編)
第40話 人喰い花ジゴキラー(後編)

第41話 殺人ミュージック
第42話 大脱走トリック作戦
第43話 悪に消えたロマンス
第44話 ギャラクターの挑戦状
第45話 夜霧のアシカ忍者隊
第46話 死の谷のガッチャマン
第47話 悪魔のエアーライン
第48話 カメラ鉄獣シャッターキラー
第49話 恐怖のメカドクガ
第50話 白骨恐竜トラコドン
第51話 回転獣キャタローラー
第52話 レッドインパルスの秘密
第53話 さらばレッドインパルス

第54話 怒りに燃えたガッチャマン
第55話 決死のミニ潜水艦
第56話 うらみのバードミサイル
第57話 魔の白い海
第58話 地獄のメカブッタ
第59話 怪獣メカ工場の秘密
第60話 科学忍者隊G-6号
第61話 幻のレッドインパルス
第62話 雪魔王ブリザーダー
第63話 皆殺しのメカ魔球
第64話 死のクリスマスプレゼント
第65話 合成鉄獣スーパー・ベム
第66話 悪魔のファッションショー

第67話 必殺!ガッチャマンファイヤー
第68話 粒子鉄獣ミクロサターン
第69話 月下の墓場
第70話 合体!死神少女
第71話 不死身の総裁X
第72話 大群!ミニ鉄獣の襲来
第73話 カッツェを追撃せよ!
第74話 バードスタイルの秘密
第75話 海魔王ジャンボシャコラ
第76話 あばかれたブレスレット
第77話 成功したベルクカッツェ
第78話 死斗1海底1万メートル
第79話 奪われたガッチャマン情報

第80話 よみがえれ!ブーメラン
第81話 ギャラクター島の決斗
第82話 三日月サンゴ礁を狙え!
第83話 炎の決死圏
第84話 くもの巣鉄獣スモッグファイバー
第85話 G-4号はあいつだ
第86話 ギャラクターの買占め作戦
第87話 三段合体鉄獣パトギラー
第88話 鉄獣スネーク828
第89話 三日月基地に罠を張れ
第90話 装甲鉄獣マタンガー
第91話 三日月基地爆破計画完了
第92話 三日月基地の最後

第93話 逆襲!地中魚雷作戦
第94話 電魔獣アングラー
第95話 合体忍者大魔人
第96話 ギャラクター本部に突入せよ
第97話 明日なき宇宙船レオナ3号
第98話 球形鉄獣グレープボンバー
第99話 傷だらけのG-2号
第100話 20年後のガッチャマン
第101話 狙撃集団ヘビーコブラ
第102話 逆転!チェックメイトX
第103話 死を賭けたG-2号
第104話 魔のブラックホール大作戦
第105話 地球消滅!0002 (最終回)

notes
当ブログで引用している、一部の写真及びイラスト類等は個人の趣味範囲の公開であるとの認識から、営利目的ではない点ご理解頂けるとは思います。著作権等はそのコンテンツのそれぞれの制作者に属しています。 このような個人で楽しんでおりますブログですので、使用させていただいている画像や引用させていただいている記事の権利は所有者に帰属するものであり、所有者の権利を侵害する意図は全くございません。所有者から指示がありました際には、速やかに従います。

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