小さな影が深夜の階段をそろりそろりと降りていく。

「どこへ行くの?甚平!」
ジュンの白鳥・・いや鶴の一声に甚平はその場に立ち止まった。

「い、いやぁそのぅ・・ほ、ほらクリスマスだし・・お姉ちゃんに何かプレゼントを・・」
シドロモドロの甚平にジュンが詰め寄る。

「なんですって?ウソおっしゃい。リュックサックに荷物をいっぱい詰めて、ど・こ・へ・行・く・つ・も・り・な・の?」

「あ~、おっかねぇ。普段もっとアニキがお姉ちゃんの乙女心をくすぐるようなプレゼントでもしていれば・・」

その言葉にジュンの眉毛がますますつり上がる。

「はぐらかさないで!」

と、つかみかかったリュックのふたが開いて一通の手紙がジュンの足元に落ちた。
「なぁに、これ?」
「あ、あのぅ・・それはですね・・つまり・・」
取り返そうと甚平が伸ばした腕をぴしゃりとはねのけてジュンはその手紙を読んだ。

「『ママへ』・・ですって??」
「・・その・・ショースケン王国へ行こうと思って・・」
うなだれる甚平を見てジュンは何も言えなくなった。

そしてその続きを読み始める。
「オイラ、ジンペイです。ママ、あの時はゴメンよ。オイラ科学忍者隊に助けてもらったんだけど、ちょっとケガをしていて口がきけなかったんだ。でももう今は元気さ。だからプレゼントと手紙を置いて行きます。科学忍者隊がギャラクターをみんなやっつけたら会いに行くから、その時まで元気にしててね。メリークリスマス、ジンペイより」

ビリジアングリーンの瞳がうるんでいた。
「気をつけていって来るのよ、甚平・・」

その時だ。
二人の揃いのブレスレットが鳴った。
姉弟は顔を見合わせると風のようにスナック・ジュンから夜の街へと飛び出して行った。



(おわり)




があわいこさんは、「深夜の階段」で登場人物が「くすぐる」、「手紙」という単語を使ったお話を考えて下さい

・・というお題で書いてみました。

実は今年はクリスマスフィクは書かないつもりでいたのですが、このお題をいただいたらフト浮かんでしまいました。
なのであまり推敲していません。

おかしいところはご容赦ください。
また、ご指摘くだされば幸いです。