ILoveGeorgeAsakura anew

科学忍者隊G-2号ことコンドルのジョー(本名=ジョージ浅倉)をこよなく愛するキョーコ南部のブログです。 科学忍者隊ガッチャマン、見ようね♪

2014年09月

放送終了40周年記念

『科学忍者隊ガッチャマン』放送終了40周年記念



故郷未だ忘れがたく 1

故郷未だ忘れがたく~ジュゼッペ浅倉物語 1
                                                                             by があわいこ




バッチャーン!

祈祷台の上から聖水が入っている聖杯が落ちる音がした。
「また、ジュゼッペのしわざだ!」
ロドリゴ・サルボ神父はニッポンから修行にやって来て半年ほどになる浅倉譲二とともに礼拝堂へとかけ下りて行った。
だがすでにジュゼッペの姿はなく、水浸しの祈祷台の上にはあったはずの金の十字架が無くなっていた。
「ジュゼッペ!どこだ?待て!」
開いたままになっている礼拝堂の扉に向かって走り出そうとする譲二を神父は無言で首を横に振り止めた。
「ジョージ、もう遅い。それより向こうだ」
神父は顎で裏口を指した。
「はい」
神父の言う「向こう」とは盗品売り場のことだ。
譲二は礼拝堂を出て行った。

ほどなく譲二は金の十字架とともに戻ってきた。
「いくらだったね?」
神父が訪ねると譲二は
「7万5千リラでした」と答えて十字架を元の位置に戻した。
「やれやれ」神父は肩をすくめた。
そして燭台に火を灯すと、大きく十字を切りロザリオを握って祈りをささげた。

サルボ神父はもう30年近くこの島に一つだけあるこの教会の神父をしている。
若い時は明るいブラウンの髪だったというが今はほとんどが白髪でその額もずいぶんと広くなった。顔は皺とシミに覆われて鼻だけが大きく顔から突き出ている。
猫背で小柄な身体つきなので一見ひ弱そうに見えるのだが子供たちと一日中サッカーに興じるスタミナの持ち主で、伸びやかで艶のあるその声はマイクなしでも聖堂中に響き渡り中年の女性だけでなくどの信者からも慕われていた。

そんな神父の隣りに同じようにひざまずくと譲二は尋ねた。
「ジュゼッペはどうしていつもあの孤児院を抜け出してくるのでしょう?」
「私にもわからない。あの孤児院はある大きな組織に組み込まれています。あそこで育ったものはみんなその組織の人間になるのです」
「なんという組織ですか?」
「そのうちわかる・・。今は祈ることしかできない」

譲二が初めてジュゼッペに会ったのは日本から神父になるべくこの教会に修行に来て1か月ほどたったころだった。
この島がギリシァの統治下だったころ彼の先祖がここへ移民してきたのだろうか、彼の彫りの深い顔立ちがそれを物語っていた。
そして今まで見たこともない美しい灰青色ブルーグレイの瞳をしていた。
そのどこか悲しげな瞳は彼が孤児だということ以外にも理由があるように思えるのだった。

次の日曜日、ミサが終わった礼拝堂はしんと静まりかえっていた。
その時、礼拝堂の扉がキィと開いて8歳くらいの男の子が一人入ってきた。
スタスタと慣れた足取りで懺悔室に向かうと、かぶっていた青いコッポラ帽を手に取り、カーテンをひらりと開けて中に入った。
間もなく神父も懺悔室の向こう側に座り小さな扉をあけた。
「十字架を盗みました・・」
「で、いくらで売れたのかね、ジュゼッペくん」
「5千リラさ」
神父は大げさにため息をつくといった。
「私は7万5千リラで買い戻してきたよ。ずいぶんとあのヤロウたちは儲けやがったな」
神父が汚い言葉を使ったのでジュゼッペは驚いたが、その言い方がいかにも板についていなかったので声を出して笑ってしまった。

「ジュゼッペ、どうしてそんなにお金が欲しいのかね?」
神父の問いにジュゼッペは即答した。
「一億リラ貯めるんだ」
「一億リラ!?なんでまたそんなにたくさん」
神父はわざと身を乗り出した
「・・・。」
ジュゼッペの口がへの字に曲がった。
「答えたくないのか?せっかく懺悔に来たのに・・」
神父が席を立とうとすると小さな声で答えが返ってきた
「母さんを探すんだ。一億リラ払ったら孤児院から出してくれるって」

神父は顔じゅうを皺だらけにして微笑んだ。
「どうだ、ジュゼッペ。それならもっと効率の良い働き方をしないかね?」
「え?」
神父の思いがけない言葉にジュゼッペは頭を上げて神父の顔を仕切りの扉越しにじっと見つめた。
「ここで働いて直接私から給料をもらうというのはどうかね?孤児院の方には私からきちんと話をするから。」
ジュゼッペは大きな灰青色の瞳を一層大きく見開いたままコクリとうなずいたのだった。

ここBC島は車で3時間も走れば一回りできる程の狭い島ではあったが、地中海性気候による自然の恵みがふんだんで、古代から様々な民族によって支配されてきた歴史がある。
そのため多種多様な文化がこの島に入り込んでいた。
島の人々はその違いを受け入れ楽しむことによって独自の文化が築かれて来たのだ。

ところが近年になってまた新たな勢力がBC島を支配しようとしていた。従来からのマフィアとも結びついていたので初めは区別がつきにくくそれに気付くものは少なかった。


次の日の朝早く神父は孤児院へ赴きジュゼッペを引き取ってきた。
取引は簡単だった。
神父が教会に昔からある大きなモザイク画を荷馬車に乗せていくと孤児院の玄関先でもう院長がジュゼッペと迎えに出ていた。
神父はこのモザイク画は島の中心にある火山が噴火した時の様子を描いたものであり、国宝級の価値がある。安く見積もっても一億リラはする絵だと大袈裟に売り込んだのだ。
そして何といっても食いぶちが減ると力説すると院長は喜んでそれに応じたのだった。

教会に戻ってくると、心配そうな顔をしているジュゼッペに神父は言った。
「オマエさんの方があんな古い絵なんかよりよっぽど面白いわい」

教会の裏に神父の小さな家がある。そこに譲二は間借りをしていた。
そしてもう一つ空いていた部屋に今日からジュゼッペが来たのだ。
その部屋にジュゼッペを寝かしつけてきた神父が居間へ戻ってくると譲二が食卓でジュゼッペのズボンにつぎあてをしていた。
「ジョージは器用だね」
「もう少し似た生地があるとよかったんですが」
「いやそれで充分だ」
出来上がったズボンを神父はいとおしそうに撫でるとジュゼッペの椅子の上に置いた。
そして裁縫カゴを片付けている譲二を手招きして改めて椅子に座らせた。

「なんでしょう?神父様」
「ジュゼッペのことはジョージ、君にまかせたいのだが。」
ランプの灯りに譲二の横顔が揺れた。
「神父様。私のような修行中のものが未来ある大切な子供を育てられるでしょうか?」
「それが君の修行だと思ってやってみなさい。主が見守っていてくださるから」

それから浅倉譲二とジュゼッペとの生活が始まった。

畑でトマトやブドウを育て、港の近くへ行って鰯をたくさん釣りあげたり、アーモンドの収穫を手伝いに近所の農家へ出かけたりもした。
そんな仕事の合間に食べるジェラードは格別だ。
神父が作るジェラードは格別においしい。ふたりは昼食のパンをわざと少し残しておいておやつのジェラードをそれに乗せて食べた。
美味うまいなぁ、これ」とジュゼッペが言う度に神父は必ず「レシピはローマの修道院から内緒で教わった」と片目をつぶるのだった。

譲二とジュゼッペ―ふたりはまるで親子のようだった。

だが、神父もジュゼッペも知らないところで譲二の心に微妙な変化が起きていた。
譲二とジュゼッペは週に一度、街の中央広場で開かれるマーケットへ買い物に出かける。
教会にはない刺激的なことが街にはたくさんあった。
ジュゼッペが一番興味をひかれたのが射的だった。
腕前も大したもので子供なので少しだけ『おまけ』をしてもらってはいるが、必ず何か景品を取ってくる。
ジュゼッペがそんなゲームに夢中になっているとき、譲二は一足先にオレンジ売り場へと向かう。
この島のレモンとオレンジは昔からの特産品で海外へも輸出されるほどだ。
そんな特産品の枝落ち(アウトレット)を売っている女性がいるのだ。
花模様のスカーフを頭に巻いて譲二の姿を見るとなぜかいつもにっこりとほほ笑んでくれる。
あとからジュゼッペが追いついて来た時も同じだ。
神に仕える身の譲二だがこのの微笑みは教会の壁にかかっているマリア様よりも美しいと思ってしまうのだ。
彼女のことが気になるのは、その微笑みのせいか?それとも瞳の色がジュゼッペと同じだからだろうか?

その日はジュゼッペが熱を出して市場への買い物は譲二だけが行くことになった。
買い物のメモと財布の中身を確認する譲二の脳裏にオレンジ売りの娘の顔が浮かんだ。
「そうだ。今日はジュゼッペもいないことだし、名前くらいは訊いても構わないだろう」
そう思うと市場への道のりも短く感じた。
一通りの買い物を済ませていつものオレンジ売り場へ行ってみると、そこにいつもいるはずの娘の姿はなかった。
しまった。今日は休みなのだろうか?
譲二は酷くがっかりしている自分に気づいた。
(そうだ、こうなったら)
譲二は日本から単身修行に行くと決めた時と同じくらいの勇気を振り絞ってオレンジ売り場を仕切っているシニョーラに声をかけた。
「こんにちは。いつも来ている女性がいませんね」
「あら、神父さん。私も女性だよ」
オレンジ売り場がどっと笑い声に包まれた。
譲二は自分の顔がカッと赤くなるのを感じた。
「ロザンナだろ?嫁に行ったよ」
シニョーラはでっぷりとした身体をゆするように大きな声で笑いながらそう答えた。
譲二は茫然となった。返す言葉が見つからない。
しかしまだ売り場のクスクス笑いは止まらない。
「あれ?帰って来ちまったよ。」
シニョーラの声に譲二が振り返ると、そこにはいつもの花柄のスカーフを頭に巻いたロザンナが立っていた。
(からかわれた!)
譲二はどうしていいかわからなくなった。
「どうしたの?おばさん。あら、神父様。こんにちは」
「い、いや。私はまだ神父じゃありません。修行の身で・・」
譲二は彼女の眼をまともに見ることができない。
「今日はボウヤと一緒じゃないんですね」
「あ、はい。風邪らしくて。熱があって」
「あら。じゃこれ、お見舞い。」
ロザンナは、そこにあったオレンジを2つ手に取ると、譲二に渡した。
「あの、ぼくアサクラといいます」
二人の手が少しだけ触れて譲二の声がうわずった。
「私ロザンナよ。アサクラさん、どこからいらしたの?」
「ニッポンです」
「ニッポン・・知ってる?おばさん」
シニョーラは顔の前で大きく手を横に振った。
譲二はハッと気がついた。
「すみません。神父様が待っているので、もう帰らないと。オレンジ、ごちそうさまです。神のお恵みがありますように」
そう、早口で言うと後ろ向きに歩きながらロザンナに手を振った。
ロザンナも手を振り返す。
と、その時、譲二はオレンジの空箱につまづいて転びそうになった。
それを見てロザンナや市場の人たちがまた笑う。
貧しくても陽気な性格の人々がこのBC島を支えているのだった。

次の日にはジュゼッペの熱も下がり、譲二とともに海岸まで塩の買い出しに出かけられるようになった。
だが、小さな島のことだ。
昨日のロザンナとのことは「尾ひれ」がついて島中の噂になっていた。
からかわれる度に譲二は「ロザンナさんは本当に良い人です。しかし私は神に仕える修行の身ですから」
と言ってみるものの何か不思議な違和感が譲二の中に残るのだった。

その日の夜。熱が下がったとはいえ本調子ではなかったのだろう、ジュゼッペは夕食を終えるとすぐにベッドへもぐりこんだ。
しかし、夜中に譲二が様子を見に行くと目を覚ましたジュゼッペは譲二を呼び止めた。
「ジョージ、僕のお父さんってどんな人かなぁ」
譲二はランプの炎を少し小さくするとベッドサイドテーブルに置いた。
「私にもわからないが、きっと君に似た人だと思うよ」
「似た人・・?」
「そうさ。親子というのはどこかが似るものなんだ」
「ジョージは?お父さんに似ているの」
譲二は目を伏せると首を横に振った

「私も君と同じように孤児だった。戦争で家族はみんな死んでしまったのだよ」
その時の光景が譲二の脳裏にまざまざと浮かんだ。
両親が炎に包まれて燃えている・・「譲・・!」自分の名を呼ぶ母の声・・

だが記憶はそれだけだった。どうしてもそれ以上のことが思い出せないのだ。

「私は親の顔を覚えているには小さすぎた。どうやって生き延びたのかよく覚えていないんだ。やっと戦争が終わった後、3日かかって漸く捕まえたヤモリを火で炙っているところに胸に十字架を下げた外国人のおじさんが来て『アマいおカシを食べたくワないデスか?』と片言の日本語で訊いてきたんだ。その時私は8歳だった。今のジュゼッペ、君と同じくらいだ。教会の孤児院で育てられているうちに神父様に憧れてね。神の道に進もうと決心して修行のためにここへ来たのさ」
短く刈り込んでいるが黒々とした髪とわかる頭を少し傾けると太くて濃い眉をぐっと寄せて譲二は顔を上げた。
そこには彼の黒檀眼エボニーアイズを見つめる灰青色の瞳をした少年がいた。


「ロザンナという娘さんを知っているね」
ある日、唐突に神父が譲二に尋ねた。
譲二は内心ドキリとしたが、「はい、あの市場でオレンジを売っている女性でしょうか?」となるべく冷静に答えた。
「彼女のことで知っておいてもらいたいことがあるのだが・・」
神父はどういうわけかジュゼッペが部屋にいないことを確かめると、珍しく玄関のドアに閂をかけた。

「昨日のミサの後、ロザンナが私に折り入って話があるといって来たのだ。何かと思ったらジュゼッペのことだったよ。」
「なぜ、ロザンナがジュゼッペを・・?」
「似ているとは思わないかね?」
神父の言葉に譲二ははっとした。
あの印象的な瞳の色・・
「ロザンナはジュゼッペの・・!」
ロザンナは人妻だったのか・・ジュゼッペはホッとしている反面、がっかりしている自分の気持ちを神父に気づかれないようにするのが精いっぱいだった。
いや、しかしそれならなぜジュゼッペは孤児院に・・?!

神父には譲二の考えがわかっていたようだ。
「彼女は8年・・いやもう9年になるかな、酷い目に合ったのだ。祭りの夜に酔っぱらった連中に絡まれてね・・」
両手を重ねてテーブルの上に置き身体を少し屈めるようにして小さな声でそう話した。
神父はそれ以上のことは語らなかったが譲二はすべてを察した。
譲二の肩にそっと手をやると神父は続けた
「ロザンナは生まれてきてはいけない子を産んでしまったと後悔しているかもしれないが、あれは神の御業なのです。神様ががなさることに間違いはありません。ジュゼッペが生まれてきたことには何か意味があるのです。神父になることだけが神に仕える方法ではありません。ジュゼッペを立派に育てることがもしかしたらこの世を救うことにつながるかも知れないのです」

これまでは孤児院にいたのでわからなかったが譲二と街へ行くようになったジュゼッペを見てロザンナはもしかしたらと神父に相談したのだろう。
ロザンナが私を見て微笑んだのは私にではなくジュゼッペを連れていたからか・・。

「親子の名乗りをしないのですか?」
譲二は疑問を神父にぶつけてみた
「父親が誰かと訊かれても答えられないからね、このままでいるか・・」
神父は地中海のような青い瞳を譲二に向けた。
「ロザンナがジュゼッペの父親にふさわしい男と結婚するかだ」

「神父様・・」譲二は自分の心がとっくに神父に読まれていたことに気づいた。
「自分の心に正直にありのままに生きなさい。決して恥ずかしいことではない。すべては神のみ心によるのです」


ステンドグラスを通してもその日の夕焼けは朱く教会の壁を染めていた。
明日の聖餐式の準備を一人でしたいた譲二は扉がそっと開くのに気付いた
そこから入ってきた影は音もなく懺悔室に入った

「神父さまはいまおりません。オリーブの収穫に出かけています」
譲二の言葉に聞き覚えのある声が小さく聞こえた
「あなたにお話があってきました。ジョージ・・」
その声を待っていたかのように譲二は懺悔室に入った
ロザンナは少し早口で話し始めた

「8年前、私は一人の男の子を生み落しました。・・でもその子は生まれてきてはいけない子だったのです。孤児院の玄関へその子を置いて立ち去ってしまったのです」
「ロザンナさん、子供の誕生は全て神様のご意志によるのです。生まれてきてはいけない子など一人もいません。ロザンナさんは苦しんだかも知れないけれど、これは神様の偉大なるご計画なのです。必ず道は開けます」
譲二の言葉にロザンナは涙にむせびながら小さくうなづいた。

その震える小さな肩を見て譲二は何かに突き動かされるように彼女がひざまずいている部屋の方へ入るとその隣りに座った。
そして彼女のその肩を引きよせた。
「ジョージ・・」
ロザンナの髪からオレンジの匂いがした

涙に光る彼女の瞳を見つめる譲二は確信した。
その灰青色の瞳はジュゼッペそのものだった。
「ロザンナ・・」
「いけないわ、ジョージ・・」

「ロザンナ、あれは悪い夢だったのだ。もう忘れよう」
「でもいずれ父親が誰か話さなくてはならなくなるわ」
「ジュゼッペの父親は私だ。いいね」
大きく見開いた灰青色の瞳が譲二を見つめていた

「ジョージは神父様になるのが夢だったのでしょう?私のために夢を捨てることになるのではないですか?」
「いいんだ。私の心は決まった」

ロザンナの肩を抱きながら譲二は続けた。
「私は戦争孤児で、日本の教会の施設で育った。大きくなったら神に仕える仕事をしようと思ってローマへ渡った。そこでここの神父様に出会ってこの教会で修行をすることにした。私がここへ来たのは神様のおぼしめしと信じている。ジュゼッペの父親になるために導かれてきたとしか思えないのだ」
涙で濡れているロザンナの頬を優しく拭う譲二。
「サルボ神父様は見抜いていらしたのだ。私が神父よりも向いていること。それはジュゼッペの新しい父親になりロザンナ、君と親子3人で仲良く暮らしていくことなんだと」


一ヶ月後・・

サルボ神父の司式によって譲二とロザンナは結婚式を挙げた。
二人はよく話し合った結果、ジュゼッペがもう少し大きくなるまでロザンナは親子の名乗りをしないことにした。その代り譲二がジュゼッペを息子として正式に迎えることになった。
ジュゼッペは浅倉家の養子となり本名はジュゼッペ浅倉となった。

そして新しい生活は譲二の母国、日本で始めることにした。
譲二が神父ではなく、家族を養っていく仕事をするためにはそのほうが良いと判断したからだった。
結婚式の翌日から渡航の準備が始まった。

ジュゼッペには一つだけ心残りがあった。だが、「両親」が楽しそうに荷造りをしているのを見てなかなか言い出せずにいた。

「もう一度だけ孤児院へ行けないかしら?」
ある日、こっそりとジュゼッペは神父に相談した。
「日本へ行く前に会っておきたい人がいるんだね」
ジュゼッペはコクリと頷いた。
「わかった。私が院長先生に話をしてみよう。特製のカンノーリを持っていけば二つ返事で引き受けてくれるさ。その人の名前を言えるかな?」
「カ、カテリーナ・・」ジュゼッペは小さな声で答えた。
神父は顔じゅうを皺だらけにしてにっこりすると片目をつぶった。「わかったよ」という意味だ。

翌々日。
ジュゼッペは神父と共に孤児院を訪れた。
広々としているが殺風景な玄関ホールにあの火山のモザイク画が掛けられていた。
そのホールの隅にある木製のベンチに二人が座って待っていると事務員と思われる女性と共にカテリーナが現れた。
琥珀色の大きな瞳に長く伸ばした枯れ葉色のくせ毛を一つにまとめている。年恰好はジュゼッペと同じくらいだろうか。
「ペッピーノ!」そう言うとカテリーナはジュゼッペのもとへ走り寄って来た。
「カテリーナ、元気だったかい?」
「教会にもらわれていったと聞いて寂しかったわ。でもよかったと思ってる」
脚を交差させて身体を斜めによじりながらカテリーナは少しはにかんで、でも嬉しそうにほほ笑んだ。
「今度『ニッポン』という国へ行くことになったんだ」
「え?」
カテリーナの顔が曇る。
ジュゼッペはなぜか急いでズボンのポケットから小さな十字架のペンダントを取り出すとカテリーナに渡した。
「これ、ジョージに習って作ったんだ。あげる」
そう早口で言うと神父が座っているベンチにさっさと戻ってしまった。
「もういいのかね?」
「うん。用事はすんだ。教会へ帰ろう」
神父はジュゼッペの顔を見て急ぐ理由がわかった。彼の目から涙が溢れそうになっていたのだ。

こうしてジュゼッペ浅倉は養父・浅倉譲二夫妻と共に故郷の島を後にしたのだった。

(つづく) 

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今日のキャプチャ (17)

105-1

最後に投げた羽根手裏剣はジュンのピンチを救いました

#105、最終話からです

キョーコとしてはもう少し前髪がパラリしていてくれると萌え度が高かったかな?
いや、もうこれ以上胸がキュッとなったら大変ですからもうこれで充分ということにします
(今、パラリを想像したら倒れそうになりました)


そんなこんなで明日はこの最終回を初めて見てから40年の節目の日です。
ひゃあ~、テレビの前にテープレコーダー(それもオープンリール!)をおいて、カメラ(予算の都合で白黒フィルム)を三脚に固定させてスタンバったあの日から40年ですよ~!

その後、録音テープは上書きされてしまうし写真は蛍光灯の光が映りこんでいて見られるものではなかった。
もう恋なんてしない、傷つくだけだから・・(涙)

ジョーの死と共に最終回の記録はそんな悲しすぎる結末を迎えてアニメの世界そのものから距離を置くようになってしまったのでした。(再放送と劇場版はチェックしましたけどね)


最終回でテレビの前にいた私たちはジョーの羽根手裏剣が地球を救ったことがわかっているけど物語の中の面々は誰も知らないのですね。
本部はRIがもう探り当てていたし、病気なのに博士の制止もきかずに一人で飛び出して、ブレスレットを破壊されて敵につかまり敵討ちさえできずに死んでしまったように思われていませんか?

ジョーの孤独な戦いを知っているのは私だけ・・と思わせる演出の巧みさもガッチャマンの世界に深みを与えていたように思います

決してジョーの指定席ではなかったレーダー前の空席も、こうして象徴的にインサートされると涙が溢れてしまいます。
105-2

ジョーが諸君に別れの言葉を遺す場面はジョー(佐々木さん)だけ別録りだったそうですが、違和感が全くありません。
キャスト・スタッフの実力がこの名作を支えていたのですね

今日のキャプチャ (16)

「立派だぜ、ベルクカッツェ」

104-1

#104、レッド・インパルス全滅にジュンの涙が美しすぎる・・の回からです

カッツェはジョーがジョージ浅倉・・というかジュゼッペ浅倉の息子ときちんと認識していたのでしょうか?
ジュゼッペに似ているとか息子は生きていて命を救ったのは南部博士だというような事実はいくつか掴んでいましたが、ジョーの素顔を見たときに「やはり似ているな」など特に言葉はありませんでした。

でもジョーに対する態度はいつもタカビーでした。
やっぱり元部下の息子という認識はあったかもしれませんね

以前は「ドブネズミ」といっていましたが今回は「うじ虫」と格上げ(下げ?)しました。
104-2

御顔を踏んだかと思えば今回は御髪を引っ張り上げたり、この後は往復ビンタの応酬です

ジュゼッペに裏切られたことは余程悔しかったのかも知れませんね。
確定はしていなくてもジュゼッペにかかわりがありそうなジョーを憎んでいるように感じます。
(科学忍者隊だということももちろんあるでしょうけど)

カッツェには中間管理職の悲哀を感じるとか、マスクが美しいとか、最後の最後に総裁に裏切られてかわいそうとか、それなりにファンの方もいるようですが、私はやっぱりカッツェは許せない。
紫色は嫌い!(爆)

今日のキャプチャ (15)

「健、俺だ。聞こえるか?」
103-1

#103、Aパートが濃すぎて「疲れたぜ」の頃は見ている方も疲れてるからです(をい)

何度も言うようですが、ジョーの装備は弱いです!
ヘルメットも手袋も、そしてこのブレスレットも・・

ギャラクターのへなちょこ弾一発くらいで破壊されちゃうなんて!

それにしてもチーフさんは射撃の腕前がすごいですね~
ミラー爺さんといい勝負だったのでは?
それともジョーを狙って外したんだけどたまたまブレスレットに当たったんでしょうか?


弾け飛んだブレスレットを目で追うジョー。
ジョーのバードスタイルもこれで見納め
103-2


そしてこの混乱の中、バラバラになったブレスレットを丁寧にヒラッたやつがいるわけです
きっとあとで直してコンドルのジョーに変身しようとか思っていたんだわ(笑)



最後にやっぱり「へ、へ、へ、へ・・」を貼っちゃいます
103-3

う、生まれ変わったら絶対にジョーの前髪になるぞ~

Author

キョーコ南部

200
アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」の科学忍者隊G-2号ことコンドルのジョーが大好きです
中の人は があわいこ です

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以下 個別記事へ

第1話 ガッチャマン対タートル・キング
第2話 魔のお化け空母現わる
第3話 嵐を呼ぶミイラ巨人
第4話 鉄獣メカデゴンに復しゅうだ
第5話 地獄の幽霊艦隊
第6話 ミニ・ロボット大作戦
第7話 ギャラクターの大航空ショー
第8話 三日月サンゴ礁の秘密
第9話 月よりの悪魔
第10話 地底怪獣大戦争
第11話 謎のレッド・インパルス
第12話 大喰い怪獣イブクロン
第13話 謎の赤い砂

第14話 恐怖のアイス・キャンダー
第15話 恐怖のクラゲ レンズ
第16話 無敵マシンメカニカ
第17話 昆虫大作戦
第18話 復讐!くじら作戦
第19話 地獄のスピード・レース
第20話 科学忍者隊危機一発
第21話 総裁Xは誰れだ
第22話 火の鳥対火喰い竜
第23話 大暴れメカ・ボール
第24話 闇に笑うネオン巨人
第25話 地獄の帝王マグマ巨人
第26話 よみがえれゴッドフェニックス

第27話 ギャラクターの魔女レーサー
第28話 見えない悪魔
第29話 魔人ギャラックX
第30話 ギロチン鉄獣カミソラール
第31話 南部博士暗殺計画
第32話 ゲゾラ大作戦(前編)
第33話 ゲゾラ大作戦(後編)
第34話 魔のオーロラ作戦
第35話 燃えろ砂漠の炎
第36話 ちびっ子ガッチャマン
第37話 電子怪獣レンジラー
第38話 謎のメカニックジャングル
第39話 人喰い花ジゴキラー(前編)
第40話 人喰い花ジゴキラー(後編)

第41話 殺人ミュージック
第42話 大脱走トリック作戦
第43話 悪に消えたロマンス
第44話 ギャラクターの挑戦状
第45話 夜霧のアシカ忍者隊
第46話 死の谷のガッチャマン
第47話 悪魔のエアーライン
第48話 カメラ鉄獣シャッターキラー
第49話 恐怖のメカドクガ
第50話 白骨恐竜トラコドン
第51話 回転獣キャタローラー
第52話 レッドインパルスの秘密
第53話 さらばレッドインパルス

第54話 怒りに燃えたガッチャマン
第55話 決死のミニ潜水艦
第56話 うらみのバードミサイル
第57話 魔の白い海
第58話 地獄のメカブッタ
第59話 怪獣メカ工場の秘密
第60話 科学忍者隊G-6号
第61話 幻のレッドインパルス
第62話 雪魔王ブリザーダー
第63話 皆殺しのメカ魔球
第64話 死のクリスマスプレゼント
第65話 合成鉄獣スーパー・ベム
第66話 悪魔のファッションショー

第67話 必殺!ガッチャマンファイヤー
第68話 粒子鉄獣ミクロサターン
第69話 月下の墓場
第70話 合体!死神少女
第71話 不死身の総裁X
第72話 大群!ミニ鉄獣の襲来
第73話 カッツェを追撃せよ!
第74話 バードスタイルの秘密
第75話 海魔王ジャンボシャコラ
第76話 あばかれたブレスレット
第77話 成功したベルクカッツェ
第78話 死斗1海底1万メートル
第79話 奪われたガッチャマン情報

第80話 よみがえれ!ブーメラン
第81話 ギャラクター島の決斗
第82話 三日月サンゴ礁を狙え!
第83話 炎の決死圏
第84話 くもの巣鉄獣スモッグファイバー
第85話 G-4号はあいつだ
第86話 ギャラクターの買占め作戦
第87話 三段合体鉄獣パトギラー
第88話 鉄獣スネーク828
第89話 三日月基地に罠を張れ
第90話 装甲鉄獣マタンガー
第91話 三日月基地爆破計画完了
第92話 三日月基地の最後

第93話 逆襲!地中魚雷作戦
第94話 電魔獣アングラー
第95話 合体忍者大魔人
第96話 ギャラクター本部に突入せよ
第97話 明日なき宇宙船レオナ3号
第98話 球形鉄獣グレープボンバー
第99話 傷だらけのG-2号
第100話 20年後のガッチャマン
第101話 狙撃集団ヘビーコブラ
第102話 逆転!チェックメイトX
第103話 死を賭けたG-2号
第104話 魔のブラックホール大作戦
第105話 地球消滅!0002 (最終回)

notes
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    時々カウンターが壊れるようなので(爆)
    様子を見ることにしました

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